どうも、ひろせんです。
金曜日の夜といえば、晩酌を楽しみにしている身としてはことさらに楽しい時である。
飲みに行くこともあるが、自宅でまったりと盃を傾けるもまたよし。
今宵はジャズでも聞きながらハイボールでも傾けよう。そうだ、つまみは前から気になっていた近所の揚げ物屋で調達しよう。
そう、それはそんな楽しみを胸に抱きながら、油断すればスキップでもしはじめそうな今日の夕方の事だった。
頼むから俺のメンチカツをいじめないでくれ
その揚げ物屋の人気メニューは和牛が入ったコロッケだという。
値段は1つ100円。コロッケとしては少々高いが、揚げる前のモノが並んでおり、注文を受けてから揚げるという。
俺はコロッケが好きだ。それも、揚げたてに限る。
弁当に入った、湿気を吸ったのが好きだという奴もいる。別に否定する気はないが、俺はやはり揚げたてのカリカリが好きだ。
とりあえず手始めにコロッケを頼む。が、しかしその横に鎮座する品物にも目が行く。
メンチカツだ。
そう、俺はメンチも好きだ。ジュワっと広がる肉汁。少々やけどしても後悔しないそのウマさ。
メンチを頼まずしては俺のメンツが立たない。
メンチとメンツ。
すまん、少々酔っているのである。面白いと思って書いたがそうでもなかった。
しかしメンチがあって見逃す手はない。俺はメンチも頼んだ。
ハイヨ!という威勢がいい声と共に油に投入されるコロッケとメンチ。
残念ながら替えたてではないその茶色い油が、逆にこの店が繁盛している事を思わせる。
「アイヨ!」
前の客のコロッケが揚がる。こいつも今日のコロッケを楽しみに帰ってきたのだろう。少し親近感がわく。
店主がセットしたタイマーを見る。まだ2分少々あるようだ。
そうだ、夕方に更新がありそうな米国株ブログでも見るか。そう思ってスマホを取りだす。
しかしジュワジュワと揚がるコロッケとメンチが、急上昇中のアイドル張りに「もっとわたしを見てなきゃダメよ!」と言っているように感じる。
俺はスマホをしまい、揚げられているコロッケとメンチを見つめることにした。
揚げ物の揚げ時は、ジュワジュワと出てくる泡が小さくなった時だと聞く。
俺のコロッケは揚がり時か?俺のメンチは頃合いか?
その時、店主が動く。
まず、コロッケを油からあげる。うむ、きつね色の良い揚げ色だ。こりゃきっとウマいに違いない。
続いてメンチをあげる。メンチもいい感じだ。ふっくら感が一目見ただけでもわかる。肉汁がほとばしりそうだ。
それから店主、持ち帰り用の容器にコロッケとメンチを詰める…と思いきや、詰めない。
何を思ったかその店主、俺のメンチをトングでギュウギュウ押し始めたのだ!!
やめてくれ!俺のメンチになにか恨みでもあるのか!俺のメンチをいじめないでくれ!
俺は確かに牛がたっぷり詰まったメンチが好きだ!でもギュウギュウに押したメンチは別に望んでない!
きっと余分な脂を追い出しているつもりなのだろう。しかし、そのしたたる液体がまた揚げ油の中に戻り「ジュワワワワワワ」と派手な音を立てているのを見ると、追い出されているのは絶対に余分な脂じゃない。旨みのたっぷり詰まった肉汁だ。
やめてくれ…もうだいぶ出ちゃっただろう…
だが、店主は手加減してくれない。
およそ10秒間ほどだっただろうか。肉汁の枯れ果てたメンチは当初のふっくら感が見る影もなくなり、スリムボディになってしまった。
俺は落ち込んで家路についた。
メンチは旨かった。が、やはり何かが物足りない旨さだった。